独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
なんで元カノに、こんなことを言われなくちゃいけないの?
心が痛むとともに、綾香さんに対する怒りがフツフツと込み上げてくる。
こうなったらひと言、言い返さないと気が済まない。
息を吸い込んで綾香さんを真っ直ぐ見つめた。けれど私より先に彼女が口を開く。
「なんて、冗談よ。びっくりさせてごめんなさいね」
綾香さんの口角がゆっくりと上がった。
笑顔を向けられては反論できない。
「……いえ」
目を伏せて、唇をキュッと結んだ。
あれは冗談なんかじゃない。私への宣戦布告だ。
口もとだけで微笑む彼女を見て、そう確信した。
綾香さんと悠太君が東京に滞在する間、なにも起こらないといいけれど……。
久しぶりの動物園を楽しもうという前向きな気持ちが、みるみるうちにしぼんでいく。
樹さんのお願いだからといって、気安く引き受けるんじゃなかった……。
今になって後悔したけれど、ふたりをこの場に残して帰るわけにはいかない。
黙ったまま列に並んでいると、腕をトントンと叩かれた。
「お姉ちゃん、つまらない?」
私を見上げる悠太君の瞳が、不安そうに揺れている。
「そ、そんなことないよ。早くパンダ見たいね」
「うん」
悠太君を安心させるために、慌てて笑顔を作った。