独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
大人の事情に、まだ幼い彼を巻き込んではいけない。それに今日の主役は悠太君だ……。
綾香さんとのやり取りは、ひとまず忘れることにした。
愛らしいパンダを見て興奮し、ランチの後も象やライオン、ゴリラにホッキョクグマなどを見て回り、売店に向かった。
「それ、樹へのお土産?」
パンダのパッケージがかわいらしいマカロンの箱を手に取った私に、綾香さんが話しかけてくる。
「はい。一緒に食べようと思って」
今日はこの後、夜の七時頃には帰れると言う樹さんと会う約束をしている。
「そう。おいしそうね。私も買おっと」
綾香さんが同じ物を手に取った。カゴの中はたくさんのお菓子でいっぱいだ。
地元の知り合いへのお土産かな……。
そんなことを考えながらレジで精算を済ませると、名残惜しく動物園をあとにして地下鉄に乗った。
明日からの手術前検査に備えて、今日は病院近くのホテルに泊まるらしい。
「華さんがいなかったら絶対に迷っていたわ。ありがとう」
初めて訪れた駅の構内を大きな荷物を持ちながら、小さな子と手を繋いで移動するのは想像以上に大変だろう。
「いいえ」
少しは役に立ててよかったと思った。