独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする
「樹先生の……好きな食べ物は?」
美容院で読んだ『彼氏の胃袋をガッチリ掴む』という、雑誌の特集記事をふと思い出した。
「えっ? そんなことが知りたいの?」
樹先生がクスクスと笑い出す。
「だって……」
料理はあまりしないけれど、私が作った物を食べて「おいしい」と言って笑ってくれたらうれしい。そう思ったけれど、どうやら好物を聞き出すのに失敗してしまったようだ。
残念……。
肩を落としてしょげていると、頭の上に大きな手がポンとのった。
「華が作るスイーツを食べてみたいな」
「えっ?」
「パティシエになりたかったんだろ?」
「どうしてそれを?」
そもそもスイーツ作りに目覚めたのは、あの悪夢のバレンタインがきっかけだ。
受け取ってもらえなかったチョコを捨てられず、自分で食べたときのことは今でもハッキリ覚えている。
あれからスイーツ作りにのめり込み、将来はパティシエになりたいと思った。でも、その経緯を樹先生に打ち明けたことは一度もない。
「華が思っている以上に、俺は華のことを知ってるよ」
「……?」
どういう意味だろう……。
首をかしげていると、頭の上にのっていた手がスッと離れていった。