同期のあいつ
「小熊くん、来て」

不機嫌を隠すこともせず、声だけ掛けて会議室へと向かった。
まずは小熊くんから事情を聞くしかない。


「すみません、鈴木チーフ。でも、今朝には届くはずだったんです」
入ってくるなり頭を下げた小熊くんは、不満そうに唇を尖らせる。

「届いてないからこんな事態になっているんでしょうが」
「それは・・・」
「仕事は結果がすべてなの。言い訳はいらない。いいから経緯を説明して」

久しぶりに怒ってしまった私の勢いに、小熊くんも口ごもりながら説明を始めた。

彼が言うには、商品の調達が遅れ元々ギリギリのスケジュールだった。でも、2日前には届けられるはずでなんとかなると思っていた。しかし、商品の最終チェック段階で不良が複数でたため再チェックに回し、そこで遅れが出た。それでも昨日には出荷し夕方には届くはずだったのに、途中で大きな事故に巻き込まれてしまい到着が遅れた。今日の昼前には到着の予定らしい。

「先方に連絡はした?」
「ええ、担当者に」
「向こうは了承したの?」

ちゃんと伝わっていないから工場長が怒ったんだと思うけれど。

「ええ、昨日のうちに電話を入れて『スケジュールの変更をしておくから大丈夫です。昼には必ずお願いしますね』って言われたんです」
ふーん。
「わかった。トラブルが重なる事はよくあるから。それは仕方がなかったと思う。でも、こんなときはもっと緊密に連絡を入れなさい。朝一でこっちから連絡していればこうはならなかったでしょう?相手に言われる前に、こっちから状況説明をしなさい。いい?」
「はい。すみません」

「工場長には私が連絡するから、あとどのくらいで着くのか具体的な時間を出して」
「はい」

ギュッと拳を握り、うつむいた小熊くん。
先方にはちゃんと説明がしてあったのにと、言いたいんだと思う。
でもね、これが仕事なのよ。
働いていれば、理不尽なことなんて山ほどあるんだから。

「何してるの、すぐに動くっ」
「はい」
小熊くんは駆け出した。
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