同期のあいつ
「ねえ、本当に行くの?」
「ああ」
「やめた方がいいと思うけれど」
「行く」

さっきから、私と鷹文はかみ合わない会話を繰り返している。

ここは我が家の家の前。
車で送ってもらった私は、一緒に行くという鷹文を必死に止めていた。

「きっと、怒られるし。無駄に怒りを買うことないって」
「ダメだ」

はあー。
そういえば、鷹文は頑固な人だった。
昨日の夜からのかわいい鷹文の印象が強すぎて忘れるところだったけれど、真っ直ぐで、正直で、嘘をつかない。ずるなんて絶対にしない人間。

「さあ、行こう」

うん。
私も頷いた。

ピンポーン。
鷹文がチャイムを鳴らし、
「はーい」
お手伝いさんの声がした。

「ただいま。一華です。悪いけれど、開けてくれる?」
鷹文がしゃべるより先に私が名乗った。

「は、はい。ただいま」
バタバタと騒々しい足音が家の中から聞こえ、

ガチャ。
ドアが開くと、

「・・・・」
無言で睨み付ける兄さんが立っていた。
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