同期のあいつ
「悠里さんは本郷商事のお嬢さんなんですよね?」
今度は私が聞いてみた。

どちらかと言えば、今の私にはそのことの方が気になる。

「ええそうです。一華さんは鈴森商事のお嬢さんですよね?」
なんだか挑んでくるような口調。

「悠里さん、私回りくどいのは苦手なのではっきりと申し上げます。今日はなぜ私に会いにいらしたんですか?」

正直言うと、悠里さんあなたは一体何をしたんですか?そう聞いてしまいたかった。
でもさすがに、証拠もないのに問い詰めることはできない。

「今回の騒動を解決したいと思いませんか?」
悠里さんは、まっすぐど真ん中に直球を投げてきた。

えっ。
思わず手が止まり、ゴクリとワインを飲み込んだ。

「それは、どういう意味でしょう?」
知らないふりをする私に、
「わかってるくせに」
意地悪な笑顔を向ける。

「わからないから、お尋ねしています」
再度聞いててみた。

「今回の騒動は一華さんがその気になればすぐにでも解決しますよ」
「それは・・・」
言葉が続かない。

私だって、うすうすは気づいている。
でも、認めたくない。

「鷹文を自由にしていただけませんか?」
少し身を乗り出すように、私を見ている。

「やめてください。そもそも鷹文は誰のものでもありませんし、私は彼の自由を奪ったつもりはありません」
アルコールも手伝って、私の口調も強くなった。

きっと、悠里さんは私の知らない鷹文をたくさん知っている。
どんなに頑張っても私に勝ち目はない。

それから、私たちの会話はどことなくぎこちなくなってしまった。
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