同期のあいつ
「どうぞ」
険悪な空気の中、麗子さんがコーヒーを出してくれた。

「コーヒーなんて出すな」
兄さんは相変わらず怒ったまま。

「そんなに怒ってどうするんですか?」

秘書であり恋人でもある麗子さん。
不機嫌な兄さんに太刀打ちできるのは麗子さんだけ。
本当にありがたい。

「で、どこにいた?」
やっぱり聞くんだ。

「昨日は父さんに腹が立って1人で飲みに出て、遅くなったから友達の家に泊ったんです」
「本当か?」
「うん」

「もー、孝太郎さん。一華ちゃんも子供じゃないんだから」
「子供じゃないから言うんだよ。嫁入り前の娘が無断外泊っておかしいだろうがっ」
「一華ちゃんには一華ちゃんの事情もあるわけで、そんなに頭ごなしに言わなくたって」
「麗子、お前はどっちの味方だ」

ヤダ、私が原因で2人がもめてる。

「2人とも喧嘩をしないで。私が悪かったんだから。本当にごめんなさい」
ちゃんと頭を下げた。

「2度目はないぞ」
「・・・はい」

私は社長の娘としてではなく実力で評価されたくて、素性を隠し必死に頑張っている。
父さんも兄さんも反対だけれど、まだ諦めるわけにはいかない。

「今度こんなことがあれば、仕事をやめさせるからな」
「・・・」
「いいな?」

返事はせずに部屋を出た。
いつまで経っても、兄さんには頭が上がらない。
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