同期のあいつ
「あの、大丈夫です。こいつは俺が送っていきますから」

「高田様の、お知り合いですか?」
いきなり登場した俺を疑わしそうに見るマスター。

「ええ、会社の同僚なんです」
「そうですか」

何度か通い顔も名前も知った俺が言えば、それ以上追求される事もない。
少し不安そうにしたものの、常連の俺が現れてホッとしたようだ。

それにしても、どうしたんだ。
今日は大口の契約が決まってご機嫌なはずだろう。
とても、上機嫌な酒には見えない。

「ほら、鈴木。帰るぞ」
「えー、高田なの?」
「おう、まだ俺のことはわかるな?」
「当たり前でしょ、馬鹿にしないで。私、平気よ」
嘘つけ。涙の跡がくっきりと残っているじゃないか。

「なにがあったんだ?」
ただ事じゃないのは俺にもわかる。

「何もないわ。もう、平気だって」
手を払い立ち上がろうとする彼女。

すぐによろけて、腕の中に落ちてきた。

「危ないなあ。ほら行くぞ」

店を出て歩き出すと、フラフラとエレベーターに向かう。

え?

「帰るんじゃないのか?」
「いいえ、帰りません」
真っ赤な顔をしてキーを見せる。

どうやら先に部屋を取っていたらしい。
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