同期のあいつ
「・・・たかた」
ん?
「私はいらない?」
「は?」
何を言ってるんだ。

「私はいらない人間なの?」
うつろな瞳で、真っ直ぐに俺を見ていた。

「そんなこと、あるはず無いだろう」
「だって・・・う、ううっ」
また泣き出した。

「どうした?誰がそんなこと言った?」
「・・・」

きっとお前は言わないな。
鈴木はそんな女だ。
でも、この泣き顔を放っては行けない。

ジャケットを脱ぎ、ギュッと彼女を抱きしめる。
あれ?こんなに小さかったんだな。

震える肩。止らない嗚咽。

もう止らなかった。

俺も男だったんだな。
6年も一緒に仕事をした同僚に手を出すなんて。


はぁー。
かわいい寝顔の鈴木を見ながら溜息が出た。
いつもと違う鈴木一華にすっかりやられた。

「先シャワー行く?」
「後でいい」
「じゃあお先」
本当はドキドキしながら、精一杯の虚勢を張った。

シャワーを出てみると鈴木はいなかった。
一晩の幻を見た気がした。
しかし、俺の体に残る記憶も、温もりも、ここに鈴木がいた事を物語っている。
1人後悔にどっぷりと浸りながら、俺はしばらく動けなかった。


その後、会社でバリバリと仕事をする彼女。
とても昨夜と同じ人とは思えなくて・・・女って怖いな。
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