同期のあいつ
呼ばれて入った会議室。

「座って」
こうやって呼ばれると、少し緊張する。
高田は上司だしね。

「小熊から何か聞いた?」

一応私の部下だから、本来なら連絡があって当然なんだけれど。

「いいえ、何も。でも、可憐ちゃんから経緯は聞きました」
「フーン」
あら、不機嫌そう。

「小熊に連絡するけれど、つながらないんだ」
あらー、それはいけない。

「私が電話してみましょうか?」
「いや、いい」

え?

「俺や部長からの電話には出ないけれど、鈴木からの電話は出るっておかしいだろう?」
「それはそうだけれど。このまま辞められたら困るんじゃ」
「しかたない」
「はあ?」

「今回の事は小熊が悪い。それがわからないなら仕方ないじゃないか」
「そんな・・・」

確かに非は小熊くんにあるけれど、まだ若いからおもわずって事もある。
みんなだって1度は経験してきた事だと思うけれど。

「大体、昨日の事もそうだぞ」

え?

「山通の件、何で小熊に報告させなかった?」
「それは・・・私が上司だし」

部長の扱いは私の方がうまいし。
小熊くんを行かせればもめそうだった。

「それじゃあ、小熊のためにならないってわかってるはずだろう?」
「・・・」

小熊くんは悪い子じゃない。
取引先ではちゃんと対応できている。我慢もできて、キレる事もない。

「鈴木に甘えてるんじゃないのか?」
「それは・・・」
否定できない。

小熊くんは、私が初めて持った部下。
気の強い所も、子供っぽいところもあるけれど、素直ないい子だと思っている。
こんな形で失いたくはない。

「今夜、可憐ちゃんが飲みに誘ってるらしいから、話してみるわ」
「俺も行く」
「私に任せて」
「ダメだ」
「高田?」

「状況を見てからでいいから連絡しろ」
それ以上言い返す事はできず
「わかった。メールする」

約束して会議室を出た。
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