同期のあいつ
小熊くんが出て行き、2人になった会議室。

「おまえ、携帯壊れてる?」
「いいえ」
「昨日何度もメールしたんだけど」
「ああ、昨日は遅くなったから」
「何時に帰ったんだ?」
「家に着いたのが・・・1時を回ってたかな」
「はあ?ずっと小熊といたのか?」
うん。

「あれからバーで飲み直して、帰ろうと思ったら終電が終わっていて、タクシーで送って行ったら帰りが遅くなってしまったの」
仕方ないじゃない。

「お前はバカだな」

はああ?
睨んでしまった。

「警戒心がなさ過ぎだろう」

警戒心って言われても、相手は小熊くんだし。

「じゃあ、どうしたらよかったのよ」
「タクシーに乗せて1人で返せば良かったんだ。そんなに酔っていたわけじゃないだろう?」
「うん、まあ」
「そもそも、もっと早く切り上げろ。それに、どんなに遅くなってもいいからメールの返事は入れろ。心配するだろうが」
「何で急にうるさく言うのよ」
今まで言わなかったのに。

「そりゃあ前科があるからな」
「前科?」
「ああ。まだ3日しかたってないのに忘れたか?」
「えっ」
急に顔が熱くなった。

その事は忘れて欲しい。

「とにかく、あんまり遅くなるな。連絡したら返事をしろ。いいな?」

コクン。
頷くしかなかった。

満足そうにニヤリとする高田。
何だかとんでもない弱みを握られた気がする。
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