同期のあいつ
「失礼します」
場違いなくらい冷静な声。

「何だっ」
大声を上げた部長。

「鈴森商事の高田です。今日はうちの鈴木との会食と伺いましたので、ご挨拶にまいりました」
冷たく無表情な顔。

「あ、ああ。そうか」
さすがに、部長が私の上から降りた。

ハー、助かった。
絶対にやられると思った。

気持ちが緩んだ途端、涙があふれ出した。

「大丈夫か?」
高田が私を抱き寄せる。

ウンウンと頷くのが精一杯。

「鈴木は体調が優れないようですので、これで失礼します」
「あ、ああ」

「今日のことは後日改めてお話しさせていただきますので」
「あ、いや・・・その・・・」
ゴモゴモと口ごもる部長を無視し、高田が私を抱き上げた。

「だ、大丈夫、歩けるから」
「いいからジッとしていろ」
怒った声。

私は何も言えなかった。
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