舞い踊る炎使い
「ん?燐、どうしたの?」

弁当と水筒、そして椅子を持ってきた紡が俺をじっと見つめる。

「……無い」

「無いって、何が?」

紡と同じように、弁当と椅子を持ってきた煌矢が声をかけてきた。

「……髪飾りとブレスレットが無いんだ。多分、盗まれた……」

俺が言うと、2人は「え?」と声を漏らす。しまった……盗まれる可能性を、考えてなかった。

「そんな……大丈夫なの?それ……」

煌矢の言葉に、俺は「……多分、大丈夫なはずだ」と俯く。

「先生に言った方が……」

「いや、ダメだ。俺のことを知っているとはいえ、『校則は校則。何で持って来てんの?』って言われるだけだ」

俺が入学したての頃、能力者である証明をするために先生の前で、髪飾りだけを使ったことがある。

その時は特別に許可されたが、今度からはアクセサリーと同じ扱いにする、と言われたんだ。

「じゃ、じゃあ……どうするの?」

「母さんと父さんに言ってみる」

まぁ、両親には怒られるかもだけどな。散々、無くすなって言われてるから。



俺は布団の上に飛び込んで、大きくため息を吐く。俺の予想通り、正座させられて、母さんと父さんにたっぷり怒られた。

多分、一時間近く。そのおかげで、足がまだ痺れてる。

それぐらい不知火家にとって、武器と羽織は大切なものだ。それを、俺は盗まれたんだ。仕方ない。
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