二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「ああ、好きだったよ。と言って、もちろん恩人の先生を裏切る気は最初からなかったから、報わ

れないことは承知だったけどね。あのふたりの仲を裂くことなんて、自分には無理だってこともわ

かってた。ずっともう一生恋はしないって、本気で思ってた。貴子さん以上の女性があらわれるは

ずないって。でも不思議なんだ。旅行から帰ってきた貴子さんに会ったら、今までの気持ちが、憑

き物が落ちたみたいに消えていた。たぶん、憧れの人を想いつづける行為に酔っていただけだった

んだと思う。夏瑛がおれの心を覆っていた殻をぶち破ってくれたんだ。だから、あの作品を公募展

に出すのをやめた。自分に嘘をついている気がして。それでー」
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