二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 そう言って、靭也は絵の前から夏瑛のほうに歩いてきた。

 靭也の陰に隠れていた作品が、ようやく夏瑛の面前に現れた。
 
 それは、以前、夏瑛がアトリエで見た、有翼の女性の絵ではなかった。

 そこに描かれているのは、膝を抱えた少女。

 その背には、あの日見た、開きかけの、脱皮する蝉の羽が描かれていた。


「一週間で、描き直したんだ。言葉よりも確かなものを夏瑛に見てもらいたくて」
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