となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 驚いたように私を見た一也の顔が、だんだんと緩んでくる。

「ああ……」

 一也は、緩ませた顔のまま頷いた。


 タクシーは、マンションの近くまで来ているようで、見慣れたコンビニが目に入った。

 信号で止まった先に見えたコンビニには、ホワイトデーと書かれた旗が立っている。



「アイス食べたいなー」


 ふと、口から漏れてしまった。
 正直、飲んだ後のデザートが食べたい。


「しょうがねえなー」

 一也は、運転手にコンビ二寄るように告げた。


「マンション近いし、ここで降りよう」

 私が言うと、一也はポケットから財布を出し、支払いを済ませた。


 コンビニに入る一也の後ろに続いて入ろうとしたが、私はクルリと向きを変えた。



 そして、信号が青に変わった横断歩道を一人で渡った。


< 116 / 125 >

この作品をシェア

pagetop