となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「全く!勝手に居なくなるなよ」


「うふっ。ごめんなさい。逃げたかと思った?」

 私は、意地悪っぽく一也を見た。


「ふんっ。逃げったって追いかけるだけだ」


 目の前に、コンビニの袋が差し出された。
 私は両手で受け取る。ちょっと高い、大好きなアイスが入っていた。

 そう、一也はいつだって私の事を見ていてくれる。好きなもの、苦手なもの、きっとたくさん知っているのだろう? いや、知ろうとしてくれるのだ……


 顔を上げると、一也と目が合った。



「大好きだよ」


「ああ…… よく、食ってるもんな……」


「ふふっ」


「なんだよ?」

 一也は、じろりと睨んだ。


「違うよ。一也の事が大好きって言ったの」



「-----!!! 本当に?」


「大好き…… となりに座るのは一也がいい」


 じっと私を見ていた一也の目が、ウルと緩んだかと思うと、ガシッと抱きしめられたいた。


「くそーーー 絶対、離さなねえから、覚悟しろよ!」


抱きしめる一也の手が、益々強くなる。



「うん。一也も覚悟しろよ!」

 私も一也の真似をして言った。


「ばか! とっくに覚悟なんか出来ているつうの。ああもうーー 早く帰ろうぜ!」


「ええ。だって、アイス食べたいよー」


「そんなもん、家で食え! 裸で食え!」


「何それ! バカ! 最低ーー」


「うるさい! さあ行くぞーー」



 私は、一也に腕を掴まれ歩き出した。



 そして、あのコンシュルジュの前を通り過ぎる……
 ニコリとほほ笑まれて……


                           ~完~

 








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