となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「まさかお前、うちの社員に手を出したんじゃないだろうな?」


「な、なんで、俺が手を出しちゃいけないんだ?」


「相手は、誰だ? お前に遊ばれたのは?」

 一也が女に本気にならず遊びまくっていると、広瀬が言っていた。そろそろ、見合いでもさせようかと、悩んでいた。


「遊びじゃねえ。本気だ! でなきゃ、こんなに頼んだりしない」



「それもそうか。で、誰だ?」


「はあー。友里だよ。篠山友里」


「あはははっ。お前も、見る目があるもんだな。彼女は仕事もきちんとこなすし、気も利くいい子だ。しかも、美人だしなー」

 一也が、篠山君に本気に惚れたのなら、私は心の底から応援したい。


「だから、頼む。友里のやつ、めっちゃ怒っているんだよ」


「何を怒らせた?」


「う…… 篠山君を裏切るような事をする奴に、私は協力しないぞ!」

 私は、少し強い口調で言った。


「そんなんじゃないよ。構いすぎただけだ……」


「何だそりゃ。……今夜は近くの居酒屋だ」

 一也を信じてみるか?
 どちらにしても、決めるのは篠山君だ。


「わかった。二次会とかもあるのか?」


「ああ。多分な。だが、若い子達とは、いつも別になるなー」


「まじかよ。おじさん頼む。二次会に行く前に連絡くれ。それから俺が迎えに行くまで、友里から目を離さないでくれ」


「ばか。そんな事出来る分けないだろ……」


 言い終わらないうちにスマホは切れた。


 なんだか、久しぶりに胸がワクワクとしてきた。
 一也のやつ、本気で惚れたな……

 一也と篠山君か……
 いいかもしれない……


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