となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「お待ちしておりました」

 テーブルの前に立ち頭を下げたのは、すらーっと背の高くアイドルのように整った顔のイケメンだった。しかも、社長とは正反対の愛想のよい笑顔。

「この店のオーナーで真治、俺の知り合いだ」

 社長の言葉に、オーナを見入ってしまっていた事に気づき、慌てて頭を下げた。

「料理はどうする?」

 真治さんが社長の方を見て言った。この社長に、客にも関わらずため口なあたり、かなり親しい関係だとわかる。


 「まかせる」

 と、言って真治さんを見た社長の目は、気のせいか睨んでいるように思える。

 「はい、はい」
  あきらかに、真治さんは笑いをこらえて、私の方を見た。

 「何か苦手なものとか、アレルギーはある?」

 私にも気さくに話しかけてくれた真治さんのおかげで、固くなってた緊張が少し緩んだ。

 「いいえ。大丈夫です」


 「そう。じゃあ、任せておいて。一也、飲み物はどうする?」


 「うーん。そうだな、生ビールでぐっといきたいな」
 社長が声を鳴らすと、今度は反対に真治さんが社長を睨んだ。

 「彼女は飲めるの?」
  真治さんが私を見て聞いてくれた。

 「少しなら……」

 お酒は強い方ではないが、嫌いではない。どちらかと言えば今日は飲みたい気分だ。

 「了解」


 そして、真治さんが用意してくれたのは、社長と私、二人分のスパークリングワインだった。


 
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