となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 何だか妙に落ち着かない日々が続いている。いつからかと辿れば、山ノ内建設の訪問の後からのような気がする。
 モヤモヤしたものがスッキリしない。

 モヤモヤを吹き飛ばしたくて、真治の店のBARのカウンターに腰を下ろした
 とりあえず注文した生ビールを流し込むと、ドサッと隣り人が座った。
「俺も生ビール」
 と、声を上げたのは、俺と真治の高校時代からの友人である猛(たける)だ。数時間前に飲みに誘った相手だ。猛は自分で自動車の修理会社を立ち上げた、態度はでかく、男気のある奴だ。
俺達は、けして真面目とは言えない高校生活を送り、今でもしょっちゅうこうして会っては飲んでいる。

 「おまちどうさま」
 カウンターに生ビールを置いたのは、自分の水割りも片手に持っている真治だ。もう、時計の針は十時を回っている。真治も、店が落ち着き、飲み始めても良い時間だ。



 「なんかあったのか?」
 猛が、チラリと俺の顔を覗きこんだ。


 「何でだよ?」
 俺も、チラリと猛の顔を見る。


 「いやー。なんとなく落ち着かねえ顔してるから」


 「そうか? ちょいとモヤモヤしてるだけだ」


 「お前にしちゃ珍しいんじゃないか? 速攻解決、引きずらないのがお前の主義じゃねえの?」


 「ああ……  理由が分からないから、解決にもならん」


 「何だそりゃ? いつからだ?」


 「先週くらいだ?」


 「何にか思いあたる事は?」

 「しいて言うなら、山ノ内建設に行ってからだ」


 「そこで何かあったんか? 気になる事とか?」

 「気になる事?」
  俺の頭に、あの女子社員の目が浮かんだ。思わず俺は、頭を左右に振った。


 「おい。今何を考えた?」


 「いや、大した事じゃねぇ」

 
 「いから言ってみろ?」


 「……  窓ふきしていた、女子社員の目だ」

 
 真治と猛が目を合わせて、大笑いしだした。
 

 「「ぷっはははは」」
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