となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 真治と猛は、ああ言うが、用事もないのに行くのもおかしなもんだ。だいたい、山ノ内建設には、あの時が初めてで、今後だって俺がわざわざ行く要件などめったにないと思う。

 「はあー」

 どうすりゃいいんだ?
 大きなため息をつき、椅子の背もたれに背中を押し付けた。

 プルルルル…… 机の上の内線がなる

 それは、リゾート開発部の部長からで、至急相談したいという内容だ。
 ものの数分で、部長が建設部長と共にやってきた。


 「実は、今建設中のリゾートホテルですが、急なクライアントの申し出で、内装の一部を変更したいと言ってきているんです」

 まあ、よくある話ではあるが……


 「で、可能なのですか? 工期は間に合いますか?」

 俺は、いつものように顔色一つ変えず、状況を確認する。


 「ええ…… 変更部の着工までには時間があるので、可能ではあるのですが…… ちょっと変わった技術が必要でして、なかなか技術のある職人が見つからないんです」


 「見つからない? 出来る人間がいるから、変更の話になったのではないのですか?」


 「そうなんですが、その職人が今どこにいるか探しているんですが分からなくて……」

 部長達は、困り果てているようだ。
 この程度の問題なら、俺の所まで相談に来ずともなんとかなるものだが、よほど苦戦しているのだろう……

 職人ねえ?
 俺の頭の中が、ピカンと色々な事を一斉に光らせた。


「わかりました。私もこころあたりを当たってみます。詳しい情報をすぐに持ってきてください」

 部長は、待っていたとばかりに、手にしていたファイルを差し出した。


 部長達が部屋から出て行くと、俺はガッツポーズをしていた。
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