となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
 急いで部屋を出て、エレベーターを降りると、ドラマで見る光景が目に入った。コンシュルジュとかいう人が、頭を下げたので、慌てて頭をさげマンションのエントランスを抜けた。
 もう一度振り向き、ここがタワーマンションであるこを知った。

 カバンからスマホを出す。朝の六時になるところだ。
 近くの駅を検索すると、昨日、迷子になって検索した駅と同じ名前が表示される。

 いったいどういう事なんだ?

 わからない事ばかりだが、とりあえず駅へと走った。



 自分のアパートに向かう電車の中、必死で考える。
 これで良かったのだろうか? いや、よくない……

 相手は、大手取引先の社長だ。しかも、夕食をご馳走になったのに、お礼も言っていない。失礼な事をしたのは分かったいる。だけど、あのまま、顔を合わせるなんて、考えただけで恥ずかしい。

 後で謝罪の電話をすべきだろうか? なんかそれもずうずうしいような……

 誰か正解を教えて欲しい。


 でも、もしかしたら、広瀬社長も記憶が無いかもしれない。私が居なくなっても、そもそも分からないかもしれない。

 そう思うと、なんだか気持ちが軽くなって、駅についた電車から、少し軽い足取りで降りた。


 よし、家に帰ってシャワーを浴びて、出勤準備をしよう!

 不思議と、付き合っていた彼に奥さんが居た事件など、頭の中に無くなっていた。


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