となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
  堀野さんと何の話をしながら歩いたのかほとんど覚えがない。堀野さんは、駅の近くまでくると、「じゃあね」と去っていった。多分、彼氏とデートなのだろう。


 一人で駅に向かおうとすると、カバンの中からラインを知らせる音がした。スマホを手にすると、画面に映った名は「野村隆」

 正直、思い出したくない名だ。

 ラインをタップする。そこには、私には理解出来ない内容のメッセージが入っていた。


『これから食事どう? 今、友里のアパートの近くだから待ってる』


 昨日の出来事なんてまるで無かったような、いつもの内容のメッセージだ。
 今までの、私なら素直に喜べた内容だ。

 でも、もう違う。
 不思議と、言い訳が欲しいとも思わないし、悲しいという感情も無かった。


 ただ、彼の待つアパートに帰る気にはなれなかった。合鍵を持っている彼は、部屋で待っているだろう。


 とりあえず時間を潰すつもりで、近くのカフェに入った。注文したカフェオレを手にして、窓際のカウンター席に座った。

 適当な理由をつけて、帰ってもらおうかとスマホをカバンから出した。メッセージの返信を考えるが、言葉が見つからない。もう、会いたたくない、それだけだ。

 思わず、深いため息がもれた。同時に、ドサッと隣りに誰かが座った。



「アホな男から、連絡でも来たのか?」

 
 まさか! そーっと隣りの席を見上げた。


 


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