となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
恋人ですか?
~友里~

「どうしても大事なものだけ、カバンにつめろ」

 さんざん泣いて、少し落ち着きを取り戻した耳元にそんな言葉が落ちてきた?


「はい?」

 一気に涙が引け、私の背中に手を回している広瀬さんの顔を見上げた。



「俺のマンションに来い」


「へぇ?」

 さっぱり意味が分からない。


「準備するぞ!」


「あの? どういう事でしょうか?」


「また、あの男が来るかもしれないだろ?」

 広瀬さんは、眉間に皺をよせ、本当に嫌そうに言った。


「いやいや、もう大丈夫だと思いますけど…… 本当にありがとうございました」

 あれだけ脅されたら、いくらなんでももう来ないだろ……


「いや、わからん。 いいから支度しろ!」

 広瀬さんは、私から手を離すと、アパートの中へと入って行った。


「でも…… そこまでお世話になる分けには……」

 広瀬さんは、はーっと大きなため息をついて、私の方へ振り向いた。



「嫌なんだよ! あんな男の居た部屋に友里を置いておくのは…… あの男の触れたものは一切持ってこなくていい! なんなら何も持ってこなくていい!!」


「えっ? それは……」

 一体どういう意味なんだろう? ちょっと頭がパニックで、広瀬さんを見る目が、きょろきょろと動いてしまう。


「だからー。友里は俺の女なんだから……」

 広瀬さんは、顔を赤らめそっぽを向いてしまった。


 数秒たち……


「ええええっーーーーー」


 私は悲鳴を上げた。

 





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