溺愛の価値、初恋の値段
飛鷹くんが浴室へ入った頃合いを見計らって、そっとドアを開け、床にある濡れた服を回収する。

セーターとTシャツ、ジーンズに靴下。
ハンガーにかけて、エアコンの風が当たる位置に渡したロープへぶら下げる。

しかし、なぜかパンツが見当たらない。



「……まさか飛鷹くん、パンツ穿()かない派?」



ぽつりと呟いた瞬間、背後から怒鳴られた。


「穿くよっ!」 

「わぁっ!」


振り返れば、ぶかぶかのパジャマを着て顔を真っ赤にした飛鷹くんがわたしを睨んでいた。
さすがに、XLサイズは大きすぎたようだ。


「も、もう上がったの? 早いね? ところで、パンツがなかったんだけど……」

「自分で洗ったんだよ!」


飛鷹くんはグレーのパンツらしきものを握りしめていた。


「え、と……じゃあ、エアコンの近くに干せば? 早く乾くよ?」


ハンガーを差し出すと、飛鷹くんは握りしめていたパンツを広げ、二つ折りにしてロープにかけた。女性用の下着並みに小さい。もしかしたら、わたしのより小さいかもしれない。


「なに見てんの?」

「あれ、ブリーフじゃないし、トランクスでもないよね? まさか女の人用……」

「ボクサーパンツだよっ!」


これ以上飛鷹くんを怒らせたら、英語のしりとりなんかをさせられそうなので、話題を変える。


「そ、そうなんだ! あのさ、ドライヤー使う? 髪、乾かしたほうがいいよ?」


鏡台から持って来たドライヤーを手渡したら、即座に突き返された。


「やって」

「え?」

「海音が乾かして」

「……なんで?」

「俺のパンツ見ただろ。タダ見する気?」

「…………」

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