キミ観察日記
「怪我は大丈夫なのか?」
「……ケガ?」
「だから。お前。足から血が出てないかってーー」

 与一がマユの足元を照らすと、ズボンには、真っ赤な血が付着していた。

 そして、思い出す。
 それは、夕方見たときには白だったことを。

「ああ。この血なら、大丈夫だよ。オレのじゃないから」
「本当に?」
「無傷だ。このオレが簡単にヤられるかよ」
「……お前」
「なんだよ」
「生け捕りにしたイノシシをさばいていたのか」

 ゴクリと唾を呑み込む、与一。

「あれ。よくわかったね」
「数日前のバーベキューで、イノシシ肉が出てきてな。冷凍されていたが、いつどこで手にいれたんだろうと疑問だった。まさかお前がさばいていたとは」
「言っただろ。半分正解って」
「本当に……お前が?」
「ナイショだよ。オレが仕留めて食ってること」
「言わねーよ。……というか、言えないな。僕も共犯みたいなものた」

 繭が、俯く。

「床の血はさ。繋いでたのが逃げ出そうとしたから、汚れちゃったんだよね。片方の足がないのに走って逃げようとして。元気だよね?」
「……わるい。僕は、そういう話が苦手なんだ」
「ああ。だからか」
「なにが」
「んーん。こっちのハナシ。解体は朝までには終わるし。それまでに綺麗にしておくから心配しなくていい」
「なにか手伝えることはあるか」
「別に。邪魔になるだけだから、寝ててよ。こーかのことも、みてなきゃでしょ?」
「……そうさせてもらう」
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