モブ子は今日も青春中!

心がざわめきました


 ゴシップ好きの世の中には、本当にうんざりする。

 いつの間にか、蓮見くんと私の噂は囁かれなくなり、それを上書きするかのように、今度は至るところで、兄ちゃんのシスコン説が流れるようになってしまった。

「兄ちゃんに申し訳ない…。」

 休み時間、机に突っ伏して喚いた私に、

「まあまあ、素敵なお兄さんじゃない。」

となぜか嬉しそうな優里亜ちゃんが応えた。

「お兄さん、怒ってないんでしょう?」

「うん…。」

 兄ちゃんは、本当に優しい。
 頭を下げる私に、『俺がかなめを大事に思ってるのは、本当のことだから』と微笑んでくれた。
 これから受験の大事なときだっていうのに、こんなことに巻き込んで、本当に申し訳なく思う。

 そういえば、この噂の出元であるあの一件を蓮見くんに訴えに行ったとき、彼はなぜかとても楽しそうな顔をしていた。

 私の周りを掻き回して、一人で楽しむのは本当に悪趣味だと思う。やめてほしい。


「しっかし、本当は逆なのに。かなめが兄ちゃん好きのブラコンなのにね。」

 …ん?聞き捨てならないぞ。
 なみの言葉に私はムクッと起き上がる。

「何、言ってんのさ、なみさん。私はブラコンじゃないよ。」

 なみがきょとんとする。
 何、その呆気にとられたような目は。

「最近やっと落ち着いたけど、あんた夏くらいまですごかったじゃん、ずっと。」

 は?

「『兄ちゃん、かっこいい。兄ちゃん、大好き』って騒いで。」

 誰だ、それは?
 なんの話だ。

「あー、あれだ。事故って頭打って、変なこと言うようになって。あの辺からだよね、なんか三津谷先輩に対して壁を作るようになったの。」

 話が見えない。
 なみの言っていることがわからない。

 兄ちゃんは兄妹だし。いつもあんな感じだったでしょう?


 あれ?
 そう言えば、あの日、なんで私事故ったんだっけ?
 何か、特別な…大事な日だった気がする…。
 あれ?


 始業のチャイムが鳴る。

 動揺してざわめく胸中をそのままに、私は授業を受けなければならなかった。


 
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