モブ子は今日も青春中!

それは誕生日のことでした



 あの日…誕生日の日、お父さんとお母さんが早めに仕事を切り上げて帰ってきてくれて、お兄ちゃんと私の4人で、私の16歳の誕生日パーティーをした。

 楽しい誕生日になると思っていた。
 いつもみたいに、家族4人で笑い合って。

 でも、その日は違っていた。


 お父さんとお母さんが、神妙な顔つきで私に言った。

 『父さんたち、再婚同士なんだ。』
 『お父さんとかたるは、あなたと血が繋がっていないのよ。』って。

 はじめは信じられなかった。
 冗談はやめてと笑い飛ばしたけれど、お父さんたちの表情は固いままだった。

 縋る思いで兄ちゃんを見ても、兄ちゃんは黙ったままで。
 兄ちゃんは知っていたんだと、思い知った。

 私が16歳になったから打ち明けたって、これからも私たちは変わらない、『家族』だって、そうお母さんたちに言われた。


 兄ちゃんはお父さんの連れ子で、私はお母さんの連れ子…。

 ショックだった。
 血のつながりがすべてじゃない。そういう家族は世の中にきっとたくさんいる。
 でも私はお父さんもお母さんも大好きで、兄ちゃんも大好きで、家族だから似てるんだって、兄妹だから似てるんだって、そう思っていた。
 ずっと一緒だって。繋がっているんだって。

 私はリビングに飾ってある家族写真を眺めて、すっと立ち上がり、『ちょっと出かけてくる。』と言った。

 そうして私は、坂の上の児童公園まで、現実から逃げるように自転車をとばしたんだ。



 細く長い息を吐く。
 呼吸を確かめるようにまた息を吸う。
 目前では『黄昏のロマンス』のオープニング曲が軽快なリズムで流れていた。


 長い間、閉じ込めていた苦しい記憶がいっぺんに押し寄せてきて、心がズキズキと痛んだ。

 それでも、私はすべてを受け入れて前に進みたい。


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