モブ子は今日も青春中!
第九章

夢を見ました


 その夜、私は夢を見た。


 私は『黄昏のロマンス』の主人公で、兄ちゃんは私の先輩だった。

 クリスマスイブ、終業式の教室。
 手鏡を使い、何度も自分の容姿をチェックする。


 校門で待ち合わせをして、放課後の制服デート。

 「寒いね」って笑い合いながら、1つのクレープを一緒に食べて、「温かくなるから」って手をつないで、イルミネーションの中を「きれいだね」って歩いて、…最後にそっとキスをした。

「大好きだよ、かなめ。」



 そう言われたところで、目が覚める。

 涙が1つ…また1つ、零れ落ちた。



 気づいてしまった。

 他の男の人に触れられると嫌な理由も。

 私以外の誰かに優しくしている姿にムカムカする理由も。

 たった数日離れただけで、気持ちが落ち着かなくて、苦しくなる理由も。

 ちょっとだけでいいから、顔が見たいって思う理由も。

 夢から目が覚めて、涙が出る理由も…。
 
 
 私、あの人が好きだ。


 でも…。

 
 時計を見る。
 まだ、夜明けにはほど遠い時間だと知る。
 カーテンを開けて窓の外を見れば、冬の星座が煌めいていた。

 窓の表面におでこを擦らせる。
 冷たくて気持ちが良い。

 息を吐くと、ガラスが白く曇った。

「…よし。」

 明日は終業式。
 私は壁にかけていた制服を見て、頷いた。
 

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