モブ子は今日も青春中!

呼び方を考えました



 それから私たちは電車の中で、これからのことを話し合った。

「かなめ、2人のときは『兄ちゃん』じゃなくて、別の呼び方にしようか。」

 手をしっかりと繋いだまま、兄ちゃんがニコニコと微笑む。

「え…、なんで?」

「だって、かなめ、『兄ちゃん』とじゃダメなんだろ?さっきまでみたいに『かたる先輩』がいい?」

 なんだか急に恥ずかしくなる。
 私は縮こまって、足元を見た。

 『かたる先輩』…は、私に『黄昏のロマンス』の中にいる錯覚をくれる。
 でも、これは現実だ。本当の彼とちゃんと向き合って、困難なことも乗り越えていきたい。

 違う呼称がいい。

「…『かたるくん』がいい。」

 覚悟を決めて兄ちゃん…かたるくんを見れば、彼は顔を真っ赤にしていて、思わず私にもそれが移る。

「ごめん…、なんか不意打ちで。自分から聴いておいてなんだけど、ごめん、今ちょっとこっち見ないで。」

 かたるくんの慌てぶりに、思わず笑みが溢れた。


 それから私たちはもう1つ、『隠し事はしない』という約束をした。

 不安になったら、相手に伝えること。1人で抱え込まないこと…。

 私は『伊吹さん』を思い出す。
 このままにしていてはいけない。

「かたるくん、…伊吹さんって人、知ってる?」

 私は覚悟を決めて聞いた。

「え…?かなめ、どうして…?」

 かたるくんが、驚いて私を見ていた。



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