懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
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ひとり分のコーヒーとルイボスティを淹れ、里帆は小さなテーブルに向い合せで置いた。
「マジかよ。なんでそんなふうに追い返しちゃうんだよ。お腹の子の父親なんだろう?」
里帆の前で息巻いているのは修太朗である。カーペットの上に胡坐をかいて、険しい表情を浮かべた。
亮介と本当の意味で別れたのは昨日。ベーカリー工房みなみが休みの今日、修太朗はお祝いのつもりで里帆のアパートを訪ねていた。
「迷惑かけたくないんです。彼には彼のふさわしい道があって、そこを私は一緒に歩けない」
「なんで歩けないって決めつける? おかしくないか? 相手だって迎えにきたつもりだと思うよ?」
修太朗は頑として納得しない様子だ。
そもそも亮介は迎えにきたわけではない。半年前に里帆がお金を受け取り、その時点で愛想を尽かせただろう。
子どもの父親かもしれないという責任感だけで来たのだろうから。
出産を決めたのは里帆ひとりの決断。それを彼に押しつけたくはない。里帆は首を横に振った。