懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
新しい家族のぬくもり


隆一から結婚の許しをもらえないまま、いたずらに時間は経過していく。

亮介にしてみれば反対されても関係ないが、なによりも里帆の気持ちを優先したいと考えていた。

とはいえ里帆もまもなく臨月を迎える。あと少しすれば、いつ産まれてもおかしくない状況なのだ。
未婚のまま出生届を出すと父親の欄が空白になり、その後の手続きが厄介だという。できれば早急に入れたいが、里帆と引き合わせる段取りもできていない状況である。

亮介が打ち合わせから社長室へ戻ると、見計らったかのように成島が部屋にやって来た。うしろに従えている見慣れない男は誰か。
不審に思いつつ亮介が椅子に腰を下ろすと、成島は手を前に組み静かな笑みをたたえた。


「強硬手段に出ました」


なんの話だというのか。
亮介が鋭く見つめ返すと、成島はうしろにいた男に振り返り、前に出るよう指示をする。

ひょっこりという様子で成島の隣に並んだ男は、恐縮しながら目を泳がせた。

歳は二十五、六といったところか。耳にかかるくらいの栗色の髪はくせ毛かふんわりとしている。背が高く、アイドルグループにいそうな中世的な顔立ちだ。

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