懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「俺がわかればいいと思っていたけど、立川さんと共有するならルールはあったほうがいいな」
「はい。副社長の指示に応じて、私でもさっと見つけられるようにしたいです」
初日のような事態にはしたくない。
「そうだな。じゃ、そのへんは立川さんにお願いするよ」
「お任せください!」
快く任せてもらえたうれしさから元気よく胸を張る。それを見た亮介はクスッと小さく笑って、もう一度里帆の肩を優しく叩いた。
「コーヒー、冷めないうちに飲めよ」
「ありがとうございます」
あたたかいカップを両手で持ち、自分のデスクに戻った亮介を斜め四十五度からそれとなく眺める。
整えられた眉は知的なラインを描き、目もとは涼しげな切れ長。真っすぐに伸びた鼻梁は高貴な印象すらある。
店にいた頃は遠くから姿を見かける程度だったが、並外れた容姿にはため息ものだとしみじみ思う。同僚たちが口を揃えて『素敵!』と、熱い視線を送っていたのも思い出した。