懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
番外編~求められる幸せ
夏の勢力がまだまだ強い八月下旬。
里帆と亮介は一絆を連れ、ある場所に向かっていた。
生後四ヶ月になった一絆はすくすく育ち、この頃は豊かな表情も見せる。寝る前にミルクをたっぷり飲むおかげか、夜中に目覚めず朝までぐっすりという日もあり、里帆の寝不足も解消しつつあった。
「一絆は? 寝てる?」
ハンドルを握る亮介がルームミラー越しにチラッと視線を投げかける。
「よく眠ってます」
一絆はチャイルドシートですやすやと夢の中だ。
マンションを出発したときには目をパッチリと開き、目の前にぶら下げてあるおもちゃに手を伸ばしていたが、五分も走らないうちにうつらうつらとし始め、さらに五分後には本格的に寝入った。
車の振動の心地よさが眠りを誘うのは、里帆にもよくわかる。亮介の運転が優しいのもあるだろう。