懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


亮介が手で〝どうぞ〟と合図を送るのを待ち、予定を読み上げる。


「十時より『テラーネーゼシステム』の和久(わく)社長、十一時には『三峰(みつみね)証券』の平井(ひらい)支社長、どちらも年末のご挨拶でお越しになります。平井支社長とは昼食をご一緒にとのことでしたので、予約を取らせていただきました」
「どこのレストラン?」


亮介が顔を上げて里帆を見る。


「中華料理の『栄森(えいしん)』です。前回、平井支社長がお越しになったときに中華料理がお好きだとおっしゃっていたのを小耳に挟みましたのでそうさせていただいたんですが……。ほかの店を取り直しいたしますか?」


亮介の反応が今ひとつのように感じて、言葉が重くなっていく。
勝手に決めないで、事前に相談してみればよかったと後悔だ。

この前、平井が来社した際に書き留めておいたページを探してノートをめくっていく。


「いや。気が利くな、立川さん」
「……はい?」


指を止めてまばたきを一回。亮介を見た。
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