懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「おはようございます」
「おはよう」
今日もいつも同様、上質な仕立てのスーツには皺ひとつない。社内にいるときの亮介は、ベストにワイシャツというのが通常のスタイル。ジャケットを脱いでハンガーにかけると、ほのかにシトラスの香りがふわっとした。
近づかないとわからないくらいのかすかな匂いが、里帆をドキッとさせる。
――っと、いけない。
仕事とは関係のないことに気をとられ、慌てて気持ちを立て直した。
いったん部屋を出て、コーヒーを淹れて戻る。亮介は意外にも甘党で、シュガーもミルクも入れるタイプだ。
「サンキュ」
デスクに置いたコーヒーに亮介が早速口をつける。
「副社長、本日の予定について確認させていただいてもよろしいでしょうか」
里帆はスマートフォンのスケジュールアプリを立ち上げ、開いたノートの上に乗せた。