懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
とはいえ、これから出産を控えて不安でいっぱい。出産後の働けない間は、僅かな貯金でなんとかやりくりしていくしかなく、数ヶ月後の自分を考えると恐ろしくなる。
それでもまだ、つわりが収まったからいいほうだ。吐き気ばかりで食べられない日が続いた時期には、もうこのまま人生が終わるのかもしれないと悲観的になったものだ。
そのときに比べれば、幾分か気持ちも体も楽である。
久しぶりに会った亮介は少し痩せたようにも見えたが、半年前と変わらず素敵なままだった。
もう社長に就任したのかな。結婚の話はどうなっただろう。きっと良家の令嬢が、今は彼の隣にいるんだろうな。
そう考えると胃の奥がキリキリと痛む。
亮介とずっと付き合っていられるとは思っていなかった。もちろん結婚もそう。
日本の小売企業における最大手であるショッピングセンターを経営するトップが、両親を早くに亡くし、なんの後ろ盾もない里帆と結婚するはずはないのだから。
いつか訪れるとわかっていた別れが、早くやって来ただけ。
頭では理解しているのに、亮介の顔を久しぶりに見たせいか心が大きく惑う。
逃げるようにしてここへ来てからの半年間、彼を想わない日はなかった。
会いたくて会いたくて、恋心は募るばかりだった。