懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
そして今日。
もう会えない。顔も見られないと思っていた亮介が、ふらりとみなみへ。
彼の驚いた様子から、里帆がそこにいるのを知らずにたまたまやって来たのだろう。
でも、もうきっと来ない。さよならも言わずにお金を取った女が、亮介の心にいつまでもいるはずはないから。
過ぎ去ったはずの痛みが里帆に暗い影を落としたそのとき、お腹がかすかにピクッと動いた。
「……今の、もしかして胎動?」
急いでお腹に手をあててみる。
でも、単なる痙攣のような気がしなくもない。なにしろ初めてのため、わからないづくし。
もう一度感じられないかと期待を込めて待ってみたが、結局それきり動かなかった。