懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました


◇◇◇◇◇

「それ、きっと胎動よ」


翌日、病院で受けた健診でドクターの橋本(はしもと)伊織(いおり)はにっこりと微笑んだ。

市内で唯一、産婦人科のある総合病院は、いつ来ても混雑している。

順調だった生理が遅れ、もしかして妊娠かも?と疑ったときに、里帆がネットリサーチで見つけた病院だ。三十代後半の伊織は自身もふたりの出産経験があるそうで、心身共に寄り添う診療で評判の女医らしい。

化粧っ気はないものの美人の伊織は、肩までの髪をきっちりとひとつにまとめ、はきはきとしゃべる快活な女性だ。

ここで妊娠の陽性判定を受けたときには少なからず取り乱した里帆だったが、伊織にゆっくり優しく説明を受け、何度か通ううちに冷静さを取り戻していった。


「やっぱり胎動ですか!」


エコーによる診察を終え、椅子に座っていた里帆はお腹に手をあて、慈しむようにさすった。

あれが胎動なんだ。
そう思うと、ますますお腹の子が愛おしい。
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