懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「お世辞? そんなつもりはないよ。そんなのは苦手だしね」
「も、もうっ、からかわないでください」
亮介を置いていこうと早足にしてすぐ、思い出したことがあり急ブレーキをかける。
「っと、急に止まるなよ」
振り返ると、亮介はバンザイするような格好でほんの少し前のめりになっていた。里帆にぶつかりそうになったのだろう。
「申し訳ありません。それより副社長、今日の午後六時半に入ったのはどういったお約束ですか?」
先ほどスマートフォンで見たスケジュール表に、突然予定が入っていたのだ。今朝の時点ではなかったもの。
「立川さん、今夜空いてる?」
「私も同席でしょうか?」
「もちろん。キミがいなくちゃ始まらない」
いったいどんな予定が入ったのかと、里帆が目をぱちくりとさせる。