懐妊秘書はエリート社長の最愛妻になりました
「本当に……違うの……」
お腹を押さえ声を震わせる。
「里帆」
亮介がそう名前を呼んだときだった。
白いカーテンがシャーッと音を立てて開き、そこから一子が顔を覗かせる。
「里帆ちゃん、大丈夫!?」
里帆の顔を見て、すぐさま駆け寄る。
「はい、ご心配をおかけしてすみません」
「いいのよ。ちょっと無理したのかしらね」
「いいえ、違うんです。健診でも貧血気味だって言われていたので」
亮介は素早く立ち上がり、一子に椅子を譲った。
「また来る」
そう言い置き、カーテンの向こうへ消えていく。里帆はその姿が見えなくなっても、カーテンから目を離せなかった。