たとえば、こんな人生も
「…ひとりで作ったの?」

テーブルの上に並べられた料理に
気づいたいつきさんは少し驚いた顔

「はい」

「美味しそう」

「お礼です」

「お礼?」

「お世話になったお礼
それに約束もしてたから」


「あと3日、残ってるけど
お世話になりました」

「…やめて欲しいな。寂しくなるから」


ぺこりと頭を下げれば
いつきさんは言葉通り
声に寂しそうな音を含ませて、僅かに眉を下げる


「…ねぇ、ひなたちゃん
この前も言ったけど
ひなたちゃんが嫌じゃないなら
居てくれていいんだよ」


真面目な顔で言われたその言葉に
ぐらりと心が揺れるのが分かった


「…」


頷きそうになる


……わがままを口にしてしまいそうになる


それをなんとか抑えて笑って首を横に振る


「…いいえ
もう充分です」


そう

充分すぎるほど
私はこの人からたくさん貰った


あたたかい笑顔

優しい言葉

安心できる場所と時間
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