たとえば、こんな人生も
それから数時間後

起きた時にはいつきさんはいなくて
代わりにリビングのテーブルの上に
置き手紙があった



『少し外に出てくるね
キッチンと冷蔵庫の中に
色々食べ物とか飲み物あるから』


『後、合鍵も渡しておくね
でも、しばらくは部屋で安静にしてること』


『何かあったら電話して』



手紙のすぐそばにはカードキーが置いてある



お医者さんから絶体安静を言い渡された私は
しばらくの間、学校もバイトもお休み

ゆっくり休みなさいって
姉さん達には言われたけど…


「……落ち着かない……」


充分眠ったから眠くもないし
ただ横になってるのも……

それに、お世話になるんだから何かしないと…


……そうだ、掃除


掃除くらいなら私でもできる
バイトでいつもやってるし


「…あ。……だめだ」


やる気になったけどすぐ断念した


「…大理石の床の掃除の仕方なんて分かんないや」


それに置いてある家具とかも全部高級品
下手に触って
壊したり傷つけたりしたら怖い



「……」



……結局
なにもすることがなくて
私はベッドの上でぼんやりしていた
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