上司の過去と部下の秘密〜隠れ御曹司は本気の恋を逃さない〜
「聞いていいか?」

「はい」

哲平さんが不躾に言葉を発した。何事かと、哲平さんを見やる。涼介さんは、特に動揺してはいないようだ。

「なんでしおりなんだ?」

「それを話すには長くなりますが、私の過去を含めて聞いていただけますか?」

「ああ、いいぞ」

哲平さんの返事を受けて、涼介さんは自身の話をした。
自分が以前、他の人と婚約していたこと。その人に裏切られて自暴自棄になっていたこと。誰も信じられず、誰にも信用されないぐらい荒れていたこと。そんな時に私と出会ったこと。涼介さんの過去の話を聞いて、私が涙を流したこと……

「他人の気持ちに寄り添える、しおりさんの優しさに惹かれました。しおりさんとなら、もう一度未来を考えられると思いました」

涼介さんが話し終えると、しばらく沈黙に包まれた。哲平さんは、過去の婚約の話に気を悪くしたのだろうか。結婚に賛成じゃないんだろうかとか、いろいろ不安に思いながら、哲平さんの顔色を窺う。
哲平さんはしばらく目を閉じて、何かを考え込んでいた。そんな哲平さんを、恵さんが見つめている。




< 237 / 286 >

この作品をシェア

pagetop