上司の過去と部下の秘密〜隠れ御曹司は本気の恋を逃さない〜

水曜日。

社内では、今もなお涼介さんの異動や、実は社長の息子だったとか、婚約者がいるとか、様々な噂が飛び交っていた。
どうしても耳に入ってきてしまうけれど、噂に惑わされてはいけないと、とにかく目の前の仕事に集中して、定時で会社を出た。

途中で食材を買いながら、涼介さんのマンションへ向かう。場所は、会社から徒歩１０分の所だ。この立地条件なら、家賃は相当高いと思う。それも、社長の息子と言うのなら、なんだか納得してしまう。
間取りは１LDKで、一応単身者向けだけど、内装はかなり豪華で広々としていた。
黒っぽい家具で統一されているところは、涼介さんらしい。


「おじゃまします」

家主がいないことはわかっていたものの、とりあえず声をかけて中に入る。いつ来ても、無駄なものが一つもなくて、きちんと片付けられた部屋だけど、今日は様子が少し違った。ソファーには、外されたネクタイが２本無造作に置かれているし、流しには使われたコップが洗われないまま置かれていた。涼介さんは、月曜から本当に忙しくしていたようだ。
とりあえず、目についたものを片付けて、調理に取りかかった。