上司の過去と部下の秘密〜隠れ御曹司は本気の恋を逃さない〜
「しおり?」

しばらく無言で考え込んでいると、涼介さんが心配そうに覗き込んできた。

「大丈夫か?」

「……涼介さん。これからのこと、少し考えさせて。時間が欲しい」

なんだか目を合わせることができなくて、俯いたまま告げた。

とりあえず部屋を出ようと思案していると、涼介さんに力強く抱きしめられた。

「りょ、涼介さん?」

「だめだ。しおりが今考えていることが、なんとなくわかる。身分の差とか、ご両親を社長に会わせることとか、急に不安になってるんじゃない?」

「……うん」

「もう親父には、しおりのことも、しおりがご両親のことを気にしていることも話してある。そりゃあ、若干驚いていたけど、大事なのは本人達の気持ちだと、賛成している。心配することなんて何もない」

「で、でも、私には荷が重い。足を引っ張りかねない」

涼介さんが体を離して、私の目を覗き込んできた。直視できない後ろめたさに、おもわず目を逸らしてしまう。

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