上司の過去と部下の秘密〜隠れ御曹司は本気の恋を逃さない〜
いつもと違う、低い声で言われて驚いた。
どういうことなのだろう……すごく気になる。
でも、踏み込んではいけない領域だとわかる。
三上さんの瞳には、これ以上聞いて欲しくないと訴える、寂しげな色が浮かんでいた。

「すみません……聞かない方が良さそうですね」

「ああ」

「でも……いつか理屈じゃなくて、抑えようのないぐらい好きになれる人が現れるといいですね」

三上さんが目を見開いて、私を見つめた。

なんでだろう……願わずにはいられなかった。彼のこの寂しげな目は、見ていたくない。
それは、理不尽な別れを経験した私に似ていたからかもしれない。
どうか、三上さんを癒してくれる素敵な女性が現れますように。

「羽場ちゃん……」

三上さんが何かを告げようとした時、タクシーはちょうど私のマンションの前に着いて、車を停めた。

「今日は、付き合ってくれてありがとう」

違う。さっきの三上さんは、もっと違うことを言おうとしていたと思う。
でも、もう今は何も言ってくれない気がして、私もお礼を伝えてタクシーを降りた。

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