上司の過去と部下の秘密〜隠れ御曹司は本気の恋を逃さない〜
振り返って、再度挨拶をしようとしたら、突然目の前が真っ暗になった。
体に感じる温かさに、三上さんに抱きしめられていることに気付いた。

人って、パニックになると何もできなくなるって本当だ。
この状態が理解できずに固まっていると、耳元で三上さんが囁いた。

「ありがとう、羽場ちゃん」

茫然とする私を残して、三上さんはタクシーに乗り込んで去っていった。


「えっと……なんだったんだろう?」

人の行き来のない自宅マンション前で、気の抜けた私の呟きだけが、やけに大きく響いた。









< 77 / 286 >

この作品をシェア

pagetop