エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「楽しんでるから心配いらないよ。俺……そう呼ばれてたんだね」
追及された瞬間、彼への未練を見破られた気がして息苦しくなる。
「波多野さん。俺はなんて呼んでた?」
倒れたとき『忍』と呼ばれたが、無意識だったのかな。
「……忍、と」
「そうか……。もう一度、宏希と呼んでくれないだろうか。呼ばれた瞬間、胸の奥のほうがカーッと熱くなって……」
記憶がよみがえってきているのだろうか。
「……宏希、さん」
「忍」
あの頃と同じように、張りのあるバリトンボイスで名前を呼ばれて、拍動が激しくなる。
なにか思い出したの?
期待いっぱいで彼を見上げたが、どうやら無理なようだ。
彼は唇を噛みしめていた。
「ごめん。図々しいお願いを……」
「とんでもないです。朝食にしましょう」
妙に恥ずかしくなった私は、すぐに視線をそらしてキッチンに戻った。
三人で囲む食卓はにぎやかで楽しい。
今朝は、フレンチトーストとツナサラダ、そしてコーンスープが並んでいる。