エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「なんでしょう?」
「うまく専務に取り入られましたね。あなたの解雇を社長が指示なさったら、専務も退職すると言いだされて、大変迷惑しております」
宏希さんが退職? まさかそこまで?
私なんてただのパートなのに……。
唖然としていると彼は眉尻を上げて続ける。
「専務のことを考えるなら、身を引い――」
「佐藤」
突然ドアが開き、宏希さんが顔を出した。
大切な会議のときのように鋭い眼光で佐藤さんをにらみつける。
「もうすぐ会議のはずだが?」
「申し訳ありません」
佐藤さんは宏希さんに会釈してから秘書室のほうへと歩みを進めた。
「波多野はなにも気にしなくていい。自分の能力を発揮してくれ」
「はい」
宏希さんは上司として事務的に私に声をかけた。
けれども、その悲しそうな瞳からは私への気遣いが見て取れた。
複雑な気持ちを抱きながら、営業統括部に戻る途中で考えを巡らせる。
『専務のことを考えるなら』という佐藤さんの発言が頭から離れない。